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Flat  /   Spherical

1800ml 4,180円(税込)

720ml 1,980円(税込)

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12. きき酒

でき上がったお酒を常温できき酒(味見)します。精米方法以外は同条件につき重なる点も多いため、異なる点だけ挙げてみます。 

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【胚芽を残した扁平精米】 
爽やかできれい、あっさりした味わい。
酸味強い。 


【球形精米】 
重厚感のある膨らみ。
バランスの取れた味わい。

扁平精米のきれい、あっさりした味わいは雑味の低減によるものと思われます。一方、酸味は強くなりました。精米方法が酵母菌の作る酸の量に影響を与えるのでしょうか。搾った直後に分析したお酒のデータを見てみましょう。 

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※日本酒度 … お酒の比重を表す。大きいと軽く、小さいと重い
※酸度・アミノ酸度 … それぞれ大きいほどその成分が多い

酸度の差は誤差の範囲で精米方法との関係はなさそうです。このデータからは酸味の強さの理由が分かりませんでした。尚、日本酒度には比較的差がありますが、これはお酒の比重を示すものですので酸味との関係性は薄いと思われます。 

また雑味とされるアミノ酸度が誤差の範囲なのも意外な結果となりました。しかしアミノ酸度はお酒に含まれるアミノ酸合計量の傾向を示しているだけで、具体的な何かを表しているものではありません。2ページの5・6で触れたように、どのアミノ酸の量が変化したかがお酒の味に影響します。ここに何かありそうです。そこで20種類あるアミノ酸の各量について、詳しく調べてみる事にしました。

尚、どちらのお酒も酸度が高いのは(竹鶴酒造では通常2.5程度)、『竹鶴6号』がアルコールへの耐性を身に着けた結果、副産物としてコハク酸とリンゴ酸を多く作るようになったことに起因しています。扁平球形の爽やかな味わいはリンゴ酸が一因でしょう。

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13.各アミノ酸量 ~「うま味の効能」~ 

結果は以下の通りです。2ページの5で挙げた代表的な4種類のアミノ酸以外にも、塩基性やうま味成分であるものは載せてあります。 

アミノ酸成分の詳細 

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(分析 広島県立総合技術研究所食品工業技術センター) 

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既報の通りアルギニンの減少率が大きく、扁平精米をきき酒した際に感じたきれい、あっさりした味わいは、雑味成分であるアルギニンの減少の影響が大きい事が示唆されました。またグルタミン酸やアスパラギン酸の減少も一因と思われます。『胚芽を残した扁平精米』でアミノ酸の減少率が全体でも10%程度しかないのは意外でしたが、これだけでお酒の味わいに大きな影響が出る事も貴重な経験でした。

しかし、扁平精米で酸味を強く感じるのはどうしてなのでしょうか?3ページの10で触れたように、うま味には他の味わいに干渉する効果があります。例えばゴーヤの苦味はうま味によって和らぎます。扁平精米はうま味成分が減ってしまったため、酸味が目立つのではないでしょうか。球形精米ではリンゴ酸の爽やかさがうま味により和らげられたとも考えられます。また球形精米で雑味を感じたかというと、それほどでもありません。これも雑味がうま味によって和らげられたと考えられます。
雑味を減らす目的で扁平精米のお酒を試みた結果、『うま味の効能』を思い知る事となりました。 

 

雑味の少ない扁平精米 

うま味豊かな球形精米 
 

と言えるでしょう。 
 

尚、この表の最下段にあるDMTS-ppとは、劣化臭の潜在量を示しています。こちらは25%減少しており期待通りの結果でした。 

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14.製品化

お酒を搾った後は加熱殺菌してタンクに貯蔵し、「食をおいしくする」コクを引き出すと共に劣化臭の差を見るため1年半熟成させました。いよいよ出荷です。多くの日本酒は出荷の際に加水され、バランスを取ります。きき酒した結果、味のバランスが最も良かったアルコール度数16.2%で製品化することにしました。 

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15.飲用温度とリンゴ酸
~リンゴ酸の『温度による味わいの違い』~ 

冷酒から燗酒と、原料が同じでも飲用温度が幅広く存在するのは日本酒の特徴の1つです。12のきき酒は常温でしたが、様々な温度帯で試してみました。球形精米は熱めのお燗が最もバランスが良く、食との相性も良いように感じます。うま味は温めると強く感じますので、その特徴が表れたのでしょう。 

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一方扁平精米はうま味が少ない分、お燗したときのバランスや食との相性は球形精米に及ばないようです。むしろ飲んだ後に若干のくどさを感じます。このくどさはリンゴ酸によるものと考えられます。リンゴ酸は温度によって感じ方が異なり、冷たいときは爽快感があるものの、温めると苦味や渋味が表れくどい味わいとなる性質があるのです。このくどい味わいは球形精米にもあるはずですが、13で触れたように豊富なうま味によって和らげられていると考えられます。むしろ扁平精米では、雑味の少なさによるきれいな味わいとリンゴ酸の爽快感を活かした、冷酒から冷や(日本酒では「冷や」は常温を指します)が良い様に思います。温めるにしてもぬる燗程度でしょう。
精米方法に違いによる『うま味』量の差と『竹鶴6号』酵母の作るリンゴ酸の『温度による味わいの違い』が、飲用温度に影響するという結果となりました。

扁平精米 … 冷酒 ~ ぬる燗
球形精米 … 上燗 ~ 飛びきり燗


と言えるのではないでしょうか。しかし『胚芽を残した扁平精米』のうま味成分が少ないとはいえ、それは竹鶴酒造の他商品と比較しての事で、一般的な日本酒(アミノ酸度で約1.3)と比べるとはるかに豊富です。きき酒に定評がある鳥取県の山枡酒店様のコメントもご紹介します。

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【胚芽を残した扁平精米】
山吹色。黒糖、オレンジ、金柑、昆布の佃煮、醤油粕など複雑だが透明感のある熟成香。金柑やオレンジ様の酸味が絡む熟成味は伸びやかで、且つ、透明感を持っている。空気を含むと、熟成の甘みと柑橘系の酸味が熟成の甘みを引き立て、更に、渋みがそれらを下支えして、印象付ける。
(お燗) 40度、濃くなった熟成味にバランスよく柑橘系の酸味や渋みが絡み酸がその後スパッと切っていく。爽やか。50度、柑橘系の酸味が融合した熟成味が、とてもシャープな酸により切れ良くなっている。渋みが甘みを引き締める。
60度、酸が丸みを帯びて、柑橘系の酸味が融合する熟成味が円やかになる。後半渋みがエッジをつくる。

どの温度帯も酸味の融合した熟成味が楽しみめる。「凛」として「爽快」

【球形精米】
山吹色。黒糖、赤味噌、昆布出汁に微かな柑橘系の香りが混ざる熟成香。熟成味に米麹の円やかな旨みが混ざる中、空気を含むと一気に柑橘系の酸味が絡み始めて、熟成の甘みを下支えする。また、酸の辛さや渋みも広がってくる。扁平に比べて固形感や柔らかさがある。
(お燗) 40度、米麹の旨みを感じる柔らかな熟成味を酸味と渋みが引き締め、酸が辛口へ導く。余韻に渋み。 50度、やや濃くなった熟成味に絡む酸味が目立つ。空気を含むと、渋みと微かな苦味がコクを与える。
60度、酸味と融合した熟成味の中に、昆布出汁の旨みや米麹の旨みを感じる。酸と渋みが厚みのある辛さを加える。 60度燗が気に入りました。

お好みもあるとは思いますが、是非飲み比べて体感して下さい。

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