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Flat  /   Spherical

1800ml 4,180円(税込)

720ml 1,980円(税込)

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5.扁平精米の問題点 ~「うま味の減少」~

扁平精米が現実的でなかったにせよ、竹鶴酒造が採用しなかった理由がもう1つあります。それは「うま味の減少」です。米のタンパク質が発酵の過程で分解されて生じる20種類のアミノ酸の中には確かに雑味の原因物質となるものがありますが、一方でグルタミン酸のようなうま味成分も含まれています。竹鶴酒造の「食をおいしくする」という主題のためにはおいしさを高める効果のあるうま味が欠かせません。また日本酒に含まれるうま味の量は他の酒類よりも圧倒的に多く、うま味こそが日本酒の特徴・長所とも言えます。

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扁平精米により雑味を減らせても、うま味という「日本酒らしさ」が損なわれるという問題が新たに発生するのです。これでは一長一短です。従来の球形精米でも竹鶴酒造が極端に精米しないのも同じ理由によります。

20種類のアミノ酸のうち、日本酒の味覚に影響する代表的な4種類とその特徴は次の表の通りです。

日本酒中の代表的なアミノ酸の特徴

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アラニン以外は酸味や渋味、苦味など、望ましくない味わいが目立ちます。扁平精米により米のタンパク質が少なくなればこうした雑味を減らす事が期待できる一方で、うま味も減ってしまうのです。尚、表の最後の「酸性/塩基性」で塩基性(アルカリ性)のものは、雑味につながりやすいと言われています。

6.『胚芽を残した扁平精米』

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「胚芽を残した扁平精米」の長所・短所

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比較するため、従来の球形精米のものも同時に造る事にしました。
尚、扁平精米に似た方法で「原形精米」というものもあります。球形精米より効率的にタンパク質を少なくできる点は同じですが、扁平精米に比べ胚芽の残る割合が少ないという特徴があります。雑味や劣化臭低減の効果も低くなると判断し、この度は採用しませんでした。

本来種子である米には胚芽という、やがて芽となる部分が存在します。通常の球形精米では取り除かれてしまうこの胚芽部分を、敢えて添加した日本酒造りでは以下の事が知られています。

 

I. 胚芽に含まれる脂肪分・タンパク質により雑味が増加する

II. 急激に発酵が進み、品質に影響する

III. 酵母のアミノ酸吸収能力が高まり、うま味と雑味の双方が減少する

IV. アミノ酸の中でも塩基性アミノ酸を特に吸収するようになり、雑味が減少する

V. アミノ酸吸収量が増加した結果、酢酸イソアミルという成分を作る酵母ではその量が増加し、香りが向上する

 

Ⅲ~Ⅴと、酒質の向上に繋がる面もあるのですが、これらの効果を得るためには使用する原料米の胚芽だけでは足りず、実にその5倍も必要であり現実的でないのは勿論、Ⅰの雑味もそれ相応となってしまいます。


扁平精米では縦方向より奥行を中心に精米しますので、精米の度合いによっては胚芽が残す事ができます。この度、広島県立食品工業技術センターの研究によりその『胚芽を残した扁平精米』を用いた日本酒が、追加で胚芽を添加することなく上記Ⅱ~Ⅴの結果が得られることが明らかとなりました。これはやり方によっては画期的な発見ではないでしょうか。胚芽を追加する事がないのでⅠの心配も少なそうです。加えて、


VI. 胚芽成分の影響で酵母の死滅率が低下した結果、劣化臭が低減される

 

という事も分かりました。劣化臭とは熟成によって生まれ、熟成香とは異なり文字通り品質を劣化させます。竹鶴酒造の「食をおいしくする」主題のためには熟成によって生まれる深い味わいを備えた日本酒の方が望ましいのですが、劣化臭を伴うのが難点でした。これが低減されるのも長所と言えるでしょう。また酵母死滅率が低下するという事は、雑味の低減にもつながります。


うま味が減少する短所は依然あるものの、雑味と劣化臭が減少する長所が2つ。しかも雑味が減少する理由は4つもあります。造る理由が揃いました。

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原形精米

(出典 株式会社サタケ)

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